筆者はこの度、『カフカとキルケゴール』という著書を出版した。
カフカは20世紀の初めに執筆したドイツ語系ユダヤ人作家である。生前は無名であったが、第二次世界大戦後、その作品世界がナチス体制の到来を予告しているとか、生の不条理面を強調する実存主義の風潮に合致するとかの理由で、一躍その名が知られるようになった。『変身』、『審判』、『城』などの作品が有名である。現在では一時ほどの流行はないが、戦後の文学や思想で、彼の影響を直接的・間接的に受けていないものはない、とさえ言えるほどである。
キルケゴールは19世紀半ばのデンマークで活躍したキリスト教思想家である。キルケゴールは、世界と歴史を法則の視点から俯瞰するヘーゲル哲学に反抗し、個人の主体的決断を重視した。彼は実存主義哲学の始祖とされている。
カフカはキルケゴールの